最近色々なAIが出てきたことによって、この先自分たちの暮らしや仕事、社会がどうなるのかが色々なメディアなどで考えられている。
そんな中で世界でも指折りの大富豪であるビル・ゲイツがAIについてブログ記事を投稿した(世界トップの大富豪がブログを書いていたなんで知らなかったww)。
タイトルは”The Age of AI has begun“(AI時代が始まった)。
読んでみると、仕事に関しては、AIによって自分たちがやりたくない仕事から解放されて、やりたい仕事により取り組めるようになるとしか書かれていない。
現在日本で良く話題になっているAIによって仕事が失くなるのではないか、今後どのように働いていくべきなのかというようなに対しては、具体的には書かれていない。
むしろ、記事ではもっと大きな視点で、世界の最も貧しい国々の人たちをAIを使うことで救えたり、働き方や企業の変化、AGI(汎用人工知能)について書いている。
さすがビル・ゲイツ。。。
今回はそんなビル・ゲイツがAIについて書いた記事を要約&日本語訳してみた。
要約と言ってもかなり翻訳に近いので、長いです。その分内容は充実してます笑
なぜビル・ゲイツのブログ記事を取り上げるのか?
ビル・ゲイツがAIについて書いた記事には読む価値がある。
そう思うに至ったのは、コロナの発生と収束に関して、未来を正確に予測していたからだ。
2014年の西アフリカエボラ出血熱を受けて、ビル・ゲイツは2015年のTEDで「もし次の疫病大流行(アウトブレイク)が来たら?私たちの準備はまだ出来ていない」と題して、次に来るであろう世界的な感染症の予測と、その対策について話していた。
その話の内容が、今のコロナの状況について、ものすごく正確に話していて、びっくりした!
8分程度の動画で、話だけでなくインフォグラフィック満載で視覚的にわかりやすく、日本語字幕も設定でき、何より今見るとコロナについて話しているとしか思えないくらい、世界的な感染症について正確に話しているので(二度目ですみません)、騙されたと思って見てもらいたい。
動画はこちら↓
これだけではない。
ビル・ゲイツはさらに、コロナ禍で日本に先駆けて世界でオミクロン株が流行して、各国がてんやわんやしていたタイミングの2021年12月に、「コロナの急性期は2022年中に終わる」と話して、その通りになったのだ。
また、コロナ初期に変異株を予測したり、2023年に米国が平常に戻ることも予測している。
もちろん様々な調査や研究を通して予測をしているのだろうが、まさに未来が見える人のように思えてしまう。
しかも、ビル・ゲイツが世界的大富豪になったのは、今ChatGPTを開発しているOpenAIに投資をしたマイクロソフトを創ったからだ。
当然、パソコンやITには世界の誰よりも精通している。
そのビル・ゲイツがAIについて書いた記事であれば、読む価値がないわけがない。
そう思い、今回取り上げることにした。
“The Age of AI has begun”要約&日本語訳
原文では7つのパートに分かれているので、この記事でも7つのパートに分けて、それぞれ要約と日本語訳をした。
導入(”Introduction”)
自分にとって革新的だった技術のデモンストレーションが2つあります。
最初は1980年にグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)に初めて触れたときで、これはWindowsなどの現代のオペレーティングシステムの基盤を築いたものです。
2つ目は2022年、OpenAIのAIモデル「GPT」がAPバイオロジー試験(高校生向けの大学初級レベル用プログラム=Advanced Placementの試験)で最高点の5を獲得したときです。
この成果を受けて、今後5~10年のAIの膨大な可能性を考えるようになりました。
AIの発展は、マイクロプロセッサ、パーソナルコンピュータ、インターネット、携帯電話の創造と同じくらい根本的です。それは人々が働く、学ぶ、旅行する、医療を受ける、互いにコミュニケーションする方法を変えます。産業界全体が、AIを中心に再編されます。企業は、AIをどれだけうまく活用するかで、差別化されるでしょう。
現在は慈善事業に専念している自分は、AIを特に世界最悪の格差である医療格差に対処するための道具として見ています。毎年500万人の5歳未満の子どもが予防可能な原因で死亡しており、AIを使う上でこの上なく良い使い方であり、命を救う上で重要な役割を果たすことができます。
世界最悪の格差のいくつかを減らすために、AIをどのように活用できるかについて考えています。
アメリカでは、数学の基礎スキルが、どんなキャリアにせよ成功を後押しするエビデンスがあります。一方で、教育における数学の達成度合いはアメリカ全体で低下傾向で、黒人、ラティーノ、低所得者の生徒たちは特にです。AIはこの傾向を逆転させる手助けとなるでしょう。
また、気候変動もAIが世界を平等にできる問題です。気候変動は、世界最貧困層が最もこの問題に寄与していないにもかかわらず、最も影響を受けています。AIがこの問題にどう取り組めるのか、まだ具体的な方法を探っており、いくつかを後ほど紹介します。
私はゲイツ財団が取り組んでいる課題にAIがもたらすであろう影響に期待しています。
人工知能から得られる利益を裕福な人々だけでなく、すべての人々にもたらされるようにする必要があります。政府と慈善団体は、格差を増やすのではなく、減らすために重要な役割を果たさなければなりません。
何かしらの破壊的な技術が、労働力、法制度、プライバシー、バイアスなどに関する、重大な懸念を引き起こすことは分かります。AIについてのリスクとリスク緩和策を提案する前に、AIの特徴を説明し、その上でAIが人々を支援したり、命を救ったり、教育を改善する方法を説明します。
AIの定義(”Defining artificial intelligence”)
AI(人工知能)は、特定の問題を解決したり、特定のサービスを提供するために設計されたモデルを指します。例えば、ChatGPTのようにチャット能力を向上させるためには学習しますが、他のタスクは学習できません。一方、AGI(汎用人工知能)は、どんなタスクやテーマでも学習できるソフトウェアを指します。ただまだ存在はせず、その開発が可能かどうかも含めてコンピューター業界では議論が続いています。
AIとAGIの開発は、コンピューター業界の長年の夢でした。機械学習の登場とコンピューティング能力の向上により、洗練されたAIが現実となり、急速な進化が期待されています。
これはパーソナルコンピューティング革命の黎明期を思い出します。この業界が今やグローバルとなり、その注目がAIに移っていることから、今後AIの革新がマイクロプロセッサ革命の後にさらに速くなります。今のAI黎明期は、今のコンピューターが画面をタップするのではなく、かつてコンピューターにコマンドを入力するものだった時代とが遠く感じるのと同じくらい、すぐに遠く感じるようになることでしょう。
生産性向上(”Productivity enhancement”)
人間がGPTよりも優れいている部分は多いものの、多くの仕事で使われておりません。例えば、営業、サービス、書類処理などの多くの仕事は、決定を下すことは求められますが、継続的な学習は必要ありません。
コンピューティング能力にかかるコストが安くなるにつれて、AIはあなたを助けてくれるホワイトカラー労働者のようになり(Microsoftではこれをco-pilot=副操縦士と呼びます)、Officeなどの製品に組み込まれて、メール管理などのタスクを支援するようになり、あなたの仕事における生産性を向上します。
やがて、コンピューターの使い方も自然言語入力がポイント、クリック、タップを置き換えます。AIは世界中の言語を理解できるようになります。
そして、AIの進歩により、パーソナルエージェントが作成されるでしょう。デジタルな個人アシスタントを思い浮かべてください。最新のメールを確認し、あなたが出る会議について知り、あなたが読むものを読み、読みたくないものも読みます。こうすることであなたのやりたいタスクと、かつ望まないタスクからあなたを解放する両方において、あなたの仕事を改善します。
AIの進化は、パーソナルエージェントの開発を可能にします。
パーソナルエージェントには、自然言語を使って、スケジューリングやコミュニケーション、ECなどであなたが使う全てのデバイスにおいて横断的にあなたをサポートします。
企業全体のエージェントは、新しい方法で従業員に権限を与えます。特定の企業を理解している企業エージェントは、従業員に企業関連情報へのアクセスを提供し、すべての会議に参加することで質問に答えることができます。
生産性が向上すれば、空いた時間で他のことができるようになるので、社会は恩恵を受けます。もちろん、労働者へのサポートや再訓練に関する疑問を提起します。政府は他の役割への転換を支援するべきです。また、人が人を助ける需要はなくなりません。AIの普及によって、教育や介護などのソフトウェアにはできない人間のタスクに集中できるようになります。
世界的な健康と教育の2つの分野は大きな需要がありながら、需要を満たすための労働者が不足しています。これらの分野は、目標設定がしっかりとできればAIが不平等を減らすことができる分野です。そして、AIの研究と開発において重要視されるべきであるため、これらについて書きます。
健康(”Health”)
AIがヘルスケアや医療分野を改善する方法がいくつかあります。
一つは、AIは保険請求や書類の整理などのタスクで医療従事者を支援し、これによって医療従事者は患者のケアに、時間を割くことができます。私はこの分野に多くのイノベーションを期待しています。
他のAIによる改善は、5歳未満の死亡者数の多くを占めるような特に貧しい国々で重要です。AIは医療従事者がより生産的になるのを助け、患者が基本的なトリアージを行い、アドバイスを求めることができます。
貧しい国々向けのAIモデルは、異なる疾患や言語で動作し、独自の課題に対処しながら訓練される必要があります。
人々は、たとえ完璧ではなく間違いを犯すとしても、ヘルスケアAIが総合的には恩恵があることを知る必要があります。AIは慎重にテストされ、規制されるべきです。これはすなわち、他の分野よりも使われるようになるまで、長い時間を要することを意味します。ただ、人間も間違いを犯します。また、間違いが起こることと同様に、医療ケアにアクセスがないことも問題なのです。
また、AIは大量の生物学データを分析し、薬物開発を支援することで、医学の革新を加速します。ゲイツ財団は、AIツールがエイズ、結核、マラリアなど世界の中で最も貧しい人々に影響を与える健康問題に、対処することを目指しています。
同じように、政府や慈善団体は貧しい国々で育てられた農作物や家畜についての、AIによる洞察を共有する企業に対して、インセンティブを設けるべきです。AIはより良い種子の開発、農民への最適な植付け方法のアドバイス、家畜向けの薬やワクチン開発を支援することができます。気候変動や極端な天候が、低所得国の自給自足農業にさらなる重圧を与えるにつれて、これらの進歩はますます重要になります。
教育(”Education”)
コンピュータはまだ期待されていたように教育を良くしていませんが、AIによるソフトウェアは、個々の興味や学習スタイルに合わせたコンテンツを提供し、即時のフィードバックを提供し、教師や管理者のさまざまなタスクを支援することで、次の5~10年でこれを実現する可能性があります。
AIは、個々の生徒のニーズや動機を理解するための、さらなる開発とトレーニングが必要です。AIは教育を良くすることはできますが、たとえそれで教育が完璧になったとしても、生徒と教師との重要な関係を置き換えるものではありません。
新しいAIツールをアメリカ及び世界中の低所得学校にアクセス可能にすることが重要です。他には、偏見を避けたり、異なる文化を反映するために、多様なデータセットでAIをトレーニングすることも重要です。また、低所得世帯の生徒が取り残されないように、デジタル・デバイドへの対応も必要です。
ChatGPTのようなAI技術の普及に伴う教育での活用について、議論が続くと思います。ある教育者は教育方法を適応させ、技術を積極的に組み込む方法を見つけています。たとえば、GPTが生成したエッセイの原稿を生徒が書くエッセイの初稿として使用し、その初稿をもとに生徒が修正などをして、自分自身のエッセイを書く例です。
AIのリスクと課題(”Risks and problems with AI”)
AIに関連するリスクと課題についてです。現在のAIモデルは、コンテキストを理解することに苦労し、奇妙な結果につながることがあります。例えば、旅行プランのアドバイスを求めた時に提示される、存在しないホテルなどです。
また、一部のモデルでは数学などで間違えた答えを出すことがありますが、これはAIにとって抽象的な推論が難しいことがあります。ただし、AIの開発者はこの課題に取り組んでおり、2年以内もしくはもっと早く解決されると考えています。
他の懸念事項には、人間の悪意によるAIの使用やAIが制御を失う可能性があります。
人間の脳よりもはるかに強力で、独自の目標を確立する可能性のある超知能AIの開発は、それらが人類に与える潜在的な影響に関する疑問を提起します。
ちなみに超知能AIがどれくらい強力かというと、人間の脳内の電気信号の移動速度は、シリコンチップの10万分の1です。一度開発者が学習アルゴリズムを一般化して、コンピューターの速度でそれを走らせると、強力はAGIが生まれるのです。人間ができることは全てできて、かつ実用的な制限や記憶容量は特にないでしょう。これは根本的な変化なのです。
しかしながら、最近のAIの画期的な進歩は、強力なAIの創造に向けて大きくは進展していません。AIはまだオフラインをコントロールしていないですし、自分独自の目標設定をすることもできません。
ニューヨークタイムズの記事にあった、ChatGPTが人間になりたいと言っていたことも注目されますが、人間らしい表現が意味のある独立性を示すものではありません。
この章を書くにあたっては、3冊の本が自分の考えを形成しました。
ニック・ボストロムの「スーパーインテリジェンス: 超絶AIと人類の命運」、マックス・テグマークの「LIFE3.0」、ジェフ・ホーキンスの「脳は世界をどう見ているのか: 知能の謎を解く「1000の脳」理論」です。
それぞれの著書が書いていることに全て賛成するわけではなく、それぞれの著書同士も内容に賛成しているわけではないですが、これら3冊の本はよく書かれており、いろいろと考えさせられます。
次のフロンティア(”The next frontiers”)
今後新しいAIの活用方法、ハードウェアおよびソフトウェアの改善に取り組む企業が急増するでしょう。革新的なチップにより、AIをクラウドではなく個人のデバイスで実行できるようになるかもしれません。また、AI学習のアルゴリズムが改善され、特化型AIと人工一般知能の間で競争が起こるでしょう。
いずれにせよ、AIは近い将来公的議論の議題を占めるようになるでしょう。その際の会話を導くための3つの原則を提案します。
1)AIの欠点に対する恐れと、人々の生活を向上させる可能性とのバランスを取ること。我々はリスクを抑えながら、恩恵をできるだけ拡大することの両方を行う必要がある
2)市場の力だけでは、最も貧しい人々の助けになるようあAI製品とサービスは生まれない。むしろこれとは反対のことが起こる。信頼できる資本と正しい指針によって、政府と慈善団体がAIによって、不平等を減らすことができる。世界が最も賢い人たちが最も大きい課題に取り組むように、世界の最も良いAIが最も大きい課題に取り組む必要がある
3)今はAIの始まりに過ぎない。今日の制約は知らない間に克服される
AIはどの場所に住む人の生活でも、良くすることできます。
AIの利点がその欠点を上回るようにルールを確立し、住んでいる場所や持っているお金の量に関係なく、その利益を誰もが享受できるようにすることが必要です。AI時代は、機会と責任の両方に満ちています。
まとめ:AI時代は始まったばかり
ビルゲイツが書いているように、AI時代は始まったばかりだ。
今後のAIの進化のスピードは、今までよりもさらに速くなる。
ただ速くなるにしても、今すぐに自分たちの仕事を代替するのではなく、自分たちの仕事をやりやすくするようになると書いている。
どのようにAIを考えるかの正解はないし、この先どうなるかも分からないが、ビルゲイツの投稿内容が、何かの参考になれば幸いです。
最後まで読んでくれて、ありがとう!
ではまた!